2010年10月29日金曜日

小指姫

たくさんの童話が世界にはありますが…
僕の彼女も最近、童話入りしたんです。

そんな話を今日は書いてみようかと思います。



僕の彼女は今現在、アイルランドに住んでいる。

十月初旬に彼女の家を訪れた時の出来事なのだが、
ヨーロッパの十月は秋を通り越し冬が始まるので、とても寒い。

窓を閉め暖房をつけ、家の中にこもっていれば、さほど寒くはないのだが…彼女の部屋には…


開かずのドアならぬ…



閉まらずの窓。がある。


窓が閉まりきらず、10センチばかり開きっぱなしになっているので、その隙間から夕方になると冷気が入ってくる。
十月初旬、バルセロナやモナコ等、まだ暖かい真夏の場所で過ごしてきた僕にとってこの冷気は耐えられない。
屈強になってきたならば耐えられるだろう。と言う気持ちもなくはないが…

閉まらずの窓を閉めてみせる!
と言う方向に、旅を通して強くなったこの屈強パワーを使う事にした。


僕ら二人は力を合わせ、窓を閉めようと試みた。
閉まらずの窓は高さが結構ある窓なので、彼女は全体重を乗せ、ぶらさがるかのような体勢にならなければならない。それくらい閉まらない屈強な窓なのだ。(ヨーロッパの窓は縦開閉の窓です)


二人で声を合わせ
せ~の
の掛け声で閉まらずの窓を勢いよくしめた。


彼女が叫んだ。
ちょっと待って。と。
しかし、この勢いを殺してしまっては閉まるものも閉まらない。待てるものか。
もう一度僕は力を込めて窓を閉めた。


彼女は叫んだ。


私の小指を挟んでる。と。


彼女の小指は

真っ赤なドレスに身を包む、綺麗なお姫様のようになっていた。



僕の彼女は小指姫。








小指を痛めた彼女は、精神的にも疲れたのか、隣でスヤスヤと眠っておられる。
眠り姫に憧れる小指姫。
何とも可愛らしいじゃないか。
そっとしておこう。そしてこの文章をメモ帳に書いております。



追伸
痛みの治まった彼女は
憎むべき窓と僕。双方を睨みながら、一言こう言った。

『くるみ割り人形って話があるけどさ、私は今日からあの窓の事を…小指割りウィンドウ。って呼ぶ事にするよ。』






世界名作童話
小指姫
第一話・小指割りウィンドウ







第二話がない事を、ただただ僕は祈るばかりだ。


愛すべき小指姫へ。

1 件のコメント:

  1. 窓に完全にぶらさがりながら笑っていたあなとを、
    痛みとともに鮮明に思い出します。
    残り一日で二話が作られないことを祈っていて下さい。

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